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月報2020年11月号〜コストゼロで効果無限大の「言葉かけ」

 皆様はクリニックのスタッフさんのモチベーションを、どのようにして維持されていますか?新しいユニフォームの導入、専門業者によるクリニックの清掃、みなさんでの楽しいお食事会、お給料の昇給やボーナス支給…。もちろん、それらも有効な手段ですが、もっとコストのかからない素敵な方法があることをご存じですか。それは「言葉かけ」です。

■チーフパーサーのメッセージ

 旅客機の場合、同じ機体なら乗務するCA(キャビンアテンダント)も同じ数という訳ではありません。ビジネスやファーストクラスの乗客数が多い場合はCAの配置数を増やして対応するので、往復路線では行きと帰りで乗務員数が増減することがあります。帰り便に乗客数が多いと、それに備えてCAが乗客として目的地に移動し、帰りの便にだけ乗務します。このようなCAの移動のことを、航空業界では「乗客にカウントしない」という意味でデッドヘッド(deadhead)と呼んでいます。
 私が初めてのデッドヘッドを経験したのはCAになって2年目のとき、他のクルーよりも一日遅れてロンドンに移動しました。初デッドヘッドは不安でいっぱいです。行きのフライトで結束が固まっているクルーの中に、うまく入っていけるだろうか。自分だけがよそ者のように思えて緊張してしまうのです。
 「山口さん、成田→ロンドンの長時間の移動、お疲れさまでした!一泊だけのロンドン滞在ですが、ゆっくり休んでください。明日のフライトでも、山口さんのファンをたくさん増やしてくださいね!」。ロンドン入りすると、ホテルの私の部屋にメッセージが届いていました。翌日に乗務するフライトのチーフパーサー(客室責任者)からでした。
 メッセージを読んで、私の不安は吹き飛びました。それどころか、翌日、クルーやお客様に会うのが楽しみになりました。「そうかあ、ファンを増やすのか。どうやって増やそう?そもそも私のファンって、いたっけ??」とモチベーションが高まりました。
 一回のフライトで多いと20名近くものCAをとりまとめるチーフパーサーは、制服を新調したり、大入り袋を配ったりはできません。できるのは、言葉かけだけです。乗務前のあいさつやブリーフィング、フライト中、乗務後のデブリーフィングなど、あらゆる場面で言葉をかけ、仲間のCAたちのモチベーションを高め、育てていくのです。

■言葉かけができていますか

 さまざまなクリニックにお邪魔していると、コミュニケ―ションが少ないところもお見受けします。仕事はできて当たり前。当たり前のことには感謝の言葉がありません。失敗したときだけ、叱られる。これでは、モチベーションは下がってしまいます。新しいスタッフさんを迎えたときも、不安を取り除くような言葉かけはできているでしょうか。不安なまま仕事をすれば、不安定な気持ちが所作にあらわれ、物を落とすなどのミスにつながりかねません。
 雰囲気の良いクリニックは対照的です。日常的に診療室の内外で相手に感謝する言葉が聞かれます。「(あのトレーを)きれいに洗ってくれてありがとう!」、「(レジン充填の準備を)完璧に整えてくれてありがとう!」、「(患者さんに)あのように指導してくれてありがとう!」。スタッフは明るく、きびきびしています。先生がたも同じではありませんか?先生にとっては通常の診療であっても、患者さんから「ありがとうございます!先生のおかげで、すごく調子がよくなりました」と言われたら、嬉しくない先生はいらっしゃらないと思います。

■その一言がスタッフを変える

 仲間を大切に思い、相手の仕事ぶりに感謝する言葉かけをすることは、コストは「0(ゼロ)」で、効果は「∞(無限大)」です。こんなにコストパフォーマンスの高い、人材育成方法、そしてモチベーションを上げる方法は、他にはないでしょう。「いつも元気に働いてくれて、ありがとう!」と言ってみてください。その日いち日、スタッフさんの働きぶりが違ってくると思います。
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